greyのこだわり

コンクリートで生活雑貨を作る

コンクリートは風雨にさらされ、過酷な条件にも耐えうる丈夫な素材です。そのため、ラフな性質を持ち、触ると砂が手についたり、シミや気泡が多く見られたりします。それゆえ、一般的な生活雑貨としては異質な印象を与えるかもしれません。

しかし、コンクリートで作られた生活雑貨はほとんど存在せず、その重さと質感が生み出す存在感は唯一無二です。私たちは、このコンクリートを生活に溶け込む製品へと昇華させることで、新しい魅力を持つ雑貨を生み出せると考えました。実際には、大きさと質感を生活空間に合わせる為にコンクリートよりも小さい骨材を使用するモルタルを使い、コンクリート調の生活雑貨を考えました。(※grey製品はモルタル製品です。骨材の大きさの違いでコンクリートとモルタルで呼称が変わります。)

綺麗すぎるコンクリート調モルタルは必要ない

私たちは当初、ムラや気泡のない均一な「綺麗なコンクリート調モルタル」を目指し、モルタルの開発を進めました。当社は、昭和36年から営んだコンクリート事業の知見やノウハウを活かし、「綺麗なコンクリート調モルタル」を完成させましたが、「綺麗すぎても、魅力は失われる」ということに気づきました。綺麗にしすぎたコンクリート調モルタルは、素材らしさを失い、重く、扱いづらく、コストも高いものだったのです。

木、プラスチック、セラミック、金属など、私たちの周囲には様々な素材があります。私たちが作った「綺麗なコンクリート調モルタル」はわざわざコンクリートやモルタルで作る必要はなくて、これらの他の素材で作れば事足りる物でした。

私たちが目指すコンクリート調モルタル

私たちは、滑らかでありながらも気泡や色ムラを残し、砂粒の不均一さを感じるテクスチャを理想とし、製品の開発をしています。

設備はほとんど自作・特注品

コンクリートは、セメントと砂などの骨材を混ぜ、水や混和剤を加えて振動を加えながら型枠に流し込み、養生室で熱と水分を与え、硬化させることで作られます。

しかし、生活雑貨をつくるとなると事情が違いました。従来のコンクリート製品は数トン単位、軽くても数百キロ。それに対し、生活雑貨は重くても数キロ。既存の設備は大きすぎて使えず、すべて一から設計し直す必要がありました。

また、従来よりも美しい仕上がりを求める中で、これまで問題にならなかった点が顕在化しました。たとえば、材料の粒子のわずかな不均一な塊が、表面のツブツブとなって現れたのです。これを解決するため、2段階で混合する独自のミキサーを開発を行いました。

さらに、硬化時の環境制御も課題となりました。温度や湿度の変化で色ムラや割れが発生するため、プログラム制御で温湿度を管理する養生室を開発し、安定した品質を実現しています。

配合の試行錯誤

配合は製品の色・質感・強度を決定づける核心要素です。気泡や色ムラを抑え、強度を高めるために、配合を細かく調整する必要がありました。

ある日突然ヒビが入る、気泡が増えるといった予期せぬ現象が度々発生し、原因の特定に数年を要したこともあります。ときには、半年間製造した製品すべてがひび割れで廃棄となることもありました。

長期的なデータ収集と改良の繰り返しでしたが、小さな現象の積み重ねを丁寧に解析し、独自のノウハウを築いていきました。

型枠を作ってくれない

型枠づくりも困難の連続でした。当初は鉄製の型枠を外注していましたが、やがて小さく複雑な形状には対応できなくなったため、自社で樹脂製の型枠づくりに挑戦することにしました。しかし、樹脂は温度変化で伸縮するため、製品が割れてしまうという問題が発生。この問題には、骨組みの補強や「逃げ構造」を設けることで対策をしています。

今もなお改良を重ねていますが、型枠の内製化によって、コスト削減とデザイン自由度の向上を実現しています。

デザインはカクカク

デザインでは、コンクリートらしい角の立った形状にこだわっています。

かつて私たちは、角を丸めた可愛らしいデザインを試みましたが、それは「コンクリートらしさ」を失い、結果的に魅力を感じられない製品となっていました。この経験を経て、素材の個性を引き立てるカクカクとした造形をブランドの軸としています。

万人受けを狙うのではなく、コンクリートの個性を好む一部の方に響くデザインを目指しています。車のデザインが似通う現代において、個性的な顔を持つ車が一部のファンに支持されるように、私たちもまた、「個性」を誇れる雑貨をつくりたいと思っています。

また、greyの製品には3〜4度の「抜き勾配」を設けています。これは型枠から滑らかに取り出すための角度ですが、同時にコンクリートらしさを象徴する美しい台形のフォルムにもなっています。

greyはストーリーを持っています

セメントは、実は廃棄物問題に大きく貢献している素材です。greyの構想以前から、この事実を多くの方に知っていただきたいと考えていました。

小さな製品ですから、私たちの製品そのものが廃棄物問題を直接解決するわけではありません。しかし、コンクリート調モルタルの魅力を通してセメントの価値を再発見してもらうこと、そして、新たなコンクリートらしさを持つ製品づくりが各方面に広がることを願っています。

私たちの夢はコンクリートらしさを持つ製品ブームの火付け役となることです。