greyのこだわり

「コンクリートで生活雑貨を作ろう」

コンクリートは風雨にさらされ、過酷な条件にも耐えうる丈夫な素材です。その為、ラフな素材でもあり、触ると砂が手についたり、シミや、気泡が沢山あったり、家の中にある身の回りの製品としては、もしかするとラフな風合いに違和感を感じるものかもしれません。

しかし、コンクリートで作られた家の中にある身の回りの製品はあまりなく、またコンクリートが持つ重さ、質感からくる存在感は他にない素材です。私たちはコンクリートを自然に生活に溶け込むような製品にできれば、とても魅力的な生活雑貨が作れると考えました。

綺麗なコンクリートはできたけど…

私たちは、ラフなコンクリートをムラや気泡がなく、均一なテクスチャを持った綺麗なコンクリートに作り変えようと開発を進めました。長年培ったコンクリートメーカーのノウハウを活かして、数年後に目指した綺麗なコンクリートを作ることができました。

しかし、ようやく出来たモノを眺めて気づいた事が、綺麗にしすぎてもダメということでした。綺麗にしすぎたらコンクリートっぽさが無くなってしまい、全く魅力がなくなっていたんです。そればかりではなく、重く、破損しやすく、コストも高くつく。

私たちの身の周りには、木、プラスチック、セラミック、金属など様々な素材で形作られたモノがあります。私たちが作った綺麗なコンクリートはコンクリートで作る必要はなくて、これらの他の素材でいいのです。綺麗なコンクリートは必要ないんだと気づきました。

私たちが目指すコンクリートとは

生活雑貨においてコンクリートに求められる事があるとすれば、コンクリートらしいラフな風合いを残しつつ、生活に溶け込むことが必要なのです。
そこで私たちはツルツル滑らかだけど、気泡、色のムラもあり、配合されている砂の不均一なテクスチャを持ったコンクリートを目指しました。

設備はほとんど自作、特注品

コンクリートの作り方は、まずはセメントと砂などの骨材を混ぜ合わせて、そこに水と混和剤と呼ばれる機能を添加する物質を混合します。それらを型枠に振動をかけながら流し込み、養生室で熱と水分を加えて硬化を待ちます。その後、固まったコンクリートを型枠から取り出して製品が出来上がるという具合です。

生活雑貨をコンクリートでつくるうえで困ったのが、生産設備でした。従来のコンクリート事業では主に数トンの製品を作っており、軽くても数百キロがせいぜい。生活雑貨では重くても数キロですから、すべての設備は巨大で、重すぎて全く使い物になりませんでした。

また、ラフな風合いを残したコンクリートを目指すといっても、従来のコンクリートに比べてとても綺麗に作ります。ですので、従来のコンクリート製造では問題にならなかった事が問題になることがありました。例えば、出来た製品をよくよく見ると色のツブツブが見えるのです。綺麗に作った事で不均一さが目立ってしまったようです。これは原料であるセメントの粒の状態、材料の混ざり具合が原因でした。従来のコンクリートのミキサーでは解決出来ずに、材料を混ぜる際には2段回に分けて混合する独自の機械を作りました。

また硬化するときの養生室の環境コントロールが必要になりました。コントロールに失敗すると色が変わったり、勝手に割れてしまったり、硬化しきれなっかたりします。その日の温度湿度によって変化し中の温度をコントロールするプログラムで動く養生室を開発しました。

配合の試行錯誤

配合についても独自のものが必要になりました。全ての材料のバランスで色、表面の質感が決まります。そして気泡、色ムラを防ぐため、さらに強度を上げるために混和剤を添加しています。

開発中では、昨日まで問題なかったのに、ある日、突然出来上がったものがヒビが入っていたり、製品一面に気泡がブワァーと出現したりしていました。当時は謎の現象で非常に困ったものでした。原因が分かるまで、数か月とか、たまに起こるぐらいのイレギュラーな現象は解決まで数年かかったことがありましす。その日に不具合が出るものならばまだいい方で、作って半年たったものが次々ににヒビが入り出した事もありました。半年前に作ってそれから作っていないわけじゃないですからね。半年間作り続けたものが全部パーになるなんて事もありました。

トラブルに対応するの為の一般的なコンクリートのノウハウは世の中にあり、こうやれば解決するといった情報がありますが、サイズや目指すものが違う私たちのコンクリートではそのままとはいかず。試行錯誤でデータ集めを進めて独自のノウハウを蓄積していくことになり、とても時間がかかりました。

配合を試すにもコンクリートを流し込んで型から取り出し、水分が飛んで出来栄えが確認できるのは2日後ですから、そこからまた新しい配合を試すわけです。並行して複数同時に試しますが大変手間がかかる作業になりました。また、さきほどのように突然半年間がパーになることもあります。今になってみればもっとうまくやる方法があったのにと振り返ることがありますが、開発中は気づかず色々ともがいて遠回りをしてしまいました。

型枠を作ってくれない

型枠も他の設備同様に独自の作り方をしています。最初は馴染みのあるコンクリート型枠メーカーに鉄製の鉄枠を作って頂いていたのですが、小さく複雑な形状になってくると対応が難しくなってきました。業界外のメーカーにも当たってみましたが、どこも小さく対応が難しくと言われてしまいました。

従来通りの型枠ではデザイン的に制約が多くなってしまうので困りました。その為鉄枠を諦め、樹脂で型枠を作るようになりました。樹脂枠だと、社内で作ることができるので自由度が広がりました。しかし、樹脂ですので温度変化により伸び縮みします。ある日出来上がった製品を取り出すために養生室を開けるとほとんどの製品が樹脂枠の伸びについていけずに割れているという事がありました。その後樹脂を支える骨組みや型枠に特殊な逃げの部分を作る事でクリアしました。

これも数年単位で改良を重ねて、何が最適か分からず、未だ改良を続けています。しかし自前で型枠を用意することでコスト面で貢献できるだけでなく、デザイン面においても大きな助けとなりました。

デザインはカクカクしたものに

デザインについては商品のラインアップを見ていただけるとわかると思いますが、コンクリらしくカクカクしたものに拘っています。

実はgreyブランドを始める前にもコンクリートで生活雑貨を世に出していました。しかし、当時、ブランディングやマーケティング、事業全体のデザインといった学問に触れる前で、簡単に言えば無知でした。デザインについて、コンクリートで何がしたのか?先に触れた「綺麗にしすぎたコンクリート」と同じくコンクリートらしさを考えておらず、生活に馴染む雑貨だからと、角は丸く、可愛さを出したりしていました。当然出来上がったものはコンクリートらしさを失ったコンクリート雑貨でした。当然そんなデザインでは売れず、続けていくことは難しくなりました。

その後、ブランドに込めたい新たな思い(ブランドストーリー)もあり、仕切り直しで新しくgreyを作りました。他の素材でいいようなデザインにはせずに、コンクリのようにカクカクしたデザインにこだわりました。万人受けする必要はなく、コンクリートらしさを気に入っていただける方がいるのではないか、そしてその方に刺さればいいなと考えております。

最近の車の顔のデザインって似たり寄ったりと感じませんか、あれは一番売れる顔だからです。売れる顔はつまり万人受けをする無難な顔とも言えます。一昔前の車の顔って個性があって楽しかったと感じる方がいらっしゃるのではないでしょうか?誤解のないように、車メーカーに文句を言うつもりはありません。共通部品を増やし、車種を減らした現代に合わせて最適解を導き出している結果だと思います。一昔前は個々の趣味に合わせて顔を作っていた時代なんでしょうね。しかし、現代でも、個性的な顔を出している小さな車メーカーがあり、一部のファンに大人気のようです。
これと同じく現代の生活雑貨はどれもこれもあまり変わり映えしないものが多い。それなら個性的で変わっているけれど一部の方に刺さるデザインが私たちの最適解ではないかと考えました。

また、一般的にコンクリート製品には抜き勾配というものを設けているものが多いです。これは型に流し込んだ後に固まったコンクリートを型から抜く際に、引き抜く方向に開くような角度が付いてないと抜くことができません。例えば、三角形が頭を出して地中に頂点を下にして埋まっていたら楽に引き抜けるけど、四角形が埋まっていたら、引き抜くのに苦労することになります。勾配がないと引き抜く際にコンクリートと型枠がこすれ合ってコンクリートが出てこないのです。型枠の壁が斜めに角度が付くことでコンクリートを型枠から引く抜くことができます。この角度の勾配のことを設計の世界では抜き勾配と呼んでいます。greyの製品にも3~4度の抜き勾配が必ずついていて製品を横から見ると台形の形状になっています。この形状もコンクリートらしさを象徴する形状になっています。

greyはストーリーを持っています

ストーリーについてに記載をさせて頂いておりますが、コンクリートの原料であるセメントは廃棄物問題に大きく貢献をしている素材です。greyの前身の製品を展開している頃から考えておりました。私たちの製品が直接廃棄物の問題を解決するなんてことはないでしょうけど、セメントが廃棄物問題に大きく貢献している事を知ってもらうこと。そして、製品のコンクリートのらしさを気に入り、生活雑貨として使いたいと感じていただける方が増えるといいなと考えています。

そして、私たちだけではなく、他のコンクリートの生活雑貨メーカー、さらには生活雑貨の分野に限らず意匠建材等のメーカーも新しいコンクリートらしさを持つセメント製品を作るようになれば将来的に廃棄物問題に貢献する事ができないかなと期待しています。私たちは廃棄物問題をひっくり返す事は出来ませんがコンクリートらしさを持つ製品ブームの火付け役を狙っています。それが私たちの夢です。